パラサイクリング日本代表のパリ2024パラリンピック競技大会は、トラック種目で幕を開けた。

この種目を主戦場としたのがMBクラス 木村和平とパイロット 三浦生誠のタンデムペア。今大会が初めてのパラリンピックだった。

そんな彼らの戦いは一周250mの木製屋内競技場、「ベロドローム・ド・サン・カンタン・アン・イヴリーヌ」で行われる。ここが、二人で踏む記念すべきパラリンピックの初舞台である。

いざ、初めての大舞台へ

初戦は男子4000m個人パーシュートB。木村・三浦はアルゼンチンのマキシミリアーノ・ゴメス(パイロット:セバスティアン・トロザ)と激突する形となった。

二人が得意とするのは短距離種目。この種目を主眼に置いていたわけでなく、あくまで調整を目的とした参戦だった。

周回は終始アルゼンチンが日本のラップタイムを上回る展開だったが、パラリンピックという大舞台は、二人の思わぬ力を引き出した。

「4kmのトレーニングはしてこなかったのですが、観客の皆さんに後押しされて今まで(三浦選手とは)出したことのないタイムが出せました」

と語るのは木村。記録は4分28秒676。10位フィニッシュで入賞は逃したものの、三浦とペアを結成してからのベストタイムを更新することとなった。

「思った以上にいい走りができた」とレース後に三浦と語る木村。三浦もまた、この日の走りに驚いていた様子であった。好調で弾みを付けた二人。木村は本命の1000mタイムトライアルについてこう語る。

「(1kmに向けては)お互いメインとして約3年間やってきた種目なので、これから少し緊張も出てくると思いますが、有難いことに、チームには気持ちをほぐしてくれるスタッフも多くて、選手同士も仲良くやっているので、お互い緊張をほぐしながら、ただ、スタートラインに立つときは適度な緊張感でレースに臨めたらいいのかなって思います。今までやってきた事を信じて力を出したいです」

この日のレースは、トラック最終日に控える1kmタイムトライアルに向けての準備、イメージトレーニングになったと言う木村は、今までやってきたことを信じて力を出したいと決意を口にした。

(選手からのコメントはパリ・パラリンピック トラック競技初日 個人パシュートで杉浦佳子5位 木村和平・三浦生誠ペア10位 – 自転車動画シクロチャンネル CYCLOCHANNEL.より引用)

3年間の集大成をかけて

初日の種目で好発進を切った二人が挑むのが、トラック最終日の1000mタイムトライアル。

木村・三浦ペアにとっての本命の種目である。初日の好感触は偶然ではないと言わんばかりに、二人はその走りで好調を証明する。レース後、三浦は語る。

「ベストな形で走れるか不安も多かったんですけど、チームのサポートもあって万全の状態で出場することができて良かったです。目標は1分1秒台を出したかったですが日本記録更新ということで自信が付く走りだったと思います」

三浦は現在競輪養成所に入所している競輪選手の卵。本来、養成所から出てこうしてパラリンピックに出場するのは異例のこと。特別な許可をもらってまでタンデムで走りたいという真摯な情熱こそが、この走りを生み出したといっても過言ではない。

また、出国前の記者会見にて、木村は3年間かけて三浦と話し合い、コンビネーションを作り上げてきたと語っていた。よくコミュニケーションをとり、より走りを洗練させていく。その努力がここに結実したと言っていいだろう。木村もまた、喜びを語る。

「3周目まで非常に良い感じで走れていたので、タイムは出てくれるんじゃないかと思いながら走っていました。最後はしんどくて垂れてしまいましたが、久しぶりにベストを更新できてホッとしましたし、何より予選を突破して決勝にあがれたって言うのが良かったです。

ここ2年くらい僕たちは(大きな大会で)予選落ちが続いて結果が出ず、苦しい時期だったので、ここに向けてやって来たことがまず一つ結果になって良かったです」

6位でフィニッシュした予選でのタイムは1分2秒002。

かつてこの地で二人が打ち立てた日本記録を上回るタイムを叩き出し、堂々と決勝に進んだのである。

自己ベストを出して、メダルにからめるような戦いを。木村は会見時にこうも語っていた。日本記録を見事に更新した二人は、続く決勝に挑む。

しかし、世界の壁は高かった。第一走者だった木村・三浦のタイム1分2秒567を後発のペアが次々に更新。ハイレベルな戦いとなった決勝を、二人は6位入賞で締めくくった。

三浦は、木村とのパラリンピック出場を喜びながらもメダルを逃した無念を口にする。

「初めて国際大会に出場したのが、和平さんとこの地だったんですけど、その時、日本チームの中で和平さんにだけメダルを掛けられなかったのが本当に悔しくて、そこからも何度も悔しい思いをして、次こそは、っていう思いで続けてきて、そこには今回も届かなかったですけどパリの舞台に和平さんと立てたってことは良かったと思います」

そんな三浦に対して、木村は感謝の気持ちを語る。

「ペアを組んだ頃は大学生で忙しかったろうし、競輪の養成所に受かってからも、本当に個人でも大変な時期だったと思うんですけど、一緒に走ってくれて良かったなと思うし、ここで一緒に自己ベストを更新できて本当に良かったです」

木村は記者会見の場で、三浦とペアを組ませてもらえることに、そしてペアを組むにあたって養成所をはじめとする様々な機関の支援があったことについての感謝を語っていた。

そして、同じ会場で「感謝を結果で返したい」とも話していた木村。惜しくもメダル獲得は次回へ持ち越しとなったが、自己ベストの更新に入賞と成績を残し、パラリンピアンとして大きな一歩を踏み出した。その走りを見たものには、きっと彼の感謝の思いが届いているだろう。

もちろん、アスリートとしての木村はこれに満足していない。

「今回の経験をしっかり次に活かして、4年後のロサンゼルスではメダル争いにしっかり絡めるように頑張っていきたいと思います」

とは、レース後の木村の言葉。彼はすでに、早くも次のパラリンピックを見据えている。そして三浦もまたリベンジを、次なる戦いを切望している。

「(4年後のロス大会については)僕だけで決められる事ではないので、なんとも言えないですが、僕としては是非リベンジしたいと思っています」

二人が見つめる先には同じ輝きがある。タンデムは、二人で同じ方向を向いて進むもの。歩みを共にするコンビの挑戦は始まったばかりだ。

(選手からのコメントはパリ・パラリンピック トラック競技最終日 男子タンデム木村和平・三浦生誠が1000mTTベスト更新で6位入賞 – 自転車動画シクロチャンネル CYCLOCHANNEL.より引用)

リザルト

  • 男子4000m個人パーシュート B 予選/10位
  • 男子1000m個人タイムトライアル B 予選/6位
  • 男子1000m個人タイムトライアル B 決勝/6位

木村和平選手コメント

トラック公式練習中に負傷するアクシデントがありましたが、日本選手団メディカルチームの皆様に支えていただき、夢であったパラリンピックの舞台に立つ事が出来ました。

また3年間強化してきた1kmTTでは自己ベストを更新し、6位入賞する事が出来ました。4年後はメダル争いができるペアに成長していきたいと思います。

パリでの挑戦は終わりますが、アルカンシェルへの挑戦、そしてロスへの挑戦は続きます。引き続きご支援・ご声援の程よろしくお願いいたします。

三浦生誠選手コメント

パラリンピックの応援ありがとうございました。大会期間中のアクシデントもあり、ロード種目への参加はしない事になってしまいましたが、自分達が標準を合わせてきたトラック種目で日本記録更新、6位入賞を果たすことが出来ました。

大会の参加にあたり関わって下さった全ての方に感謝しております。ありがとうございました。

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